BACHATAへのいざない

皆様、如何お過ごしですか?ワタクシ、ドミニカ共和国の大衆音楽の1ジャンルで、「ドミニカの演歌」と称される“BACHATA”について研究しております、ドクトーラ・マサキチと申します。以後、お見知りおきを。

ドミニカといえばメレンゲが有名ですが、下町の庶民や農村部の人々の間で、メレンゲと並び、もしくはそれ以上にポピュラーなのが、バチャータでございます。
本日は、バチャータに関心をお持ちの、協力隊員の皆様及び関係者の方々の為に、ワタクシの拙い研究を中間発表させて頂きます。

♪バチャータのルーツ♪
バチャータは、「メレンゲ・ティピコ」、つまりアコーディオン・太鼓・ギロを用いる伝統的なメレンゲから派生したものだそうです。アコーディオンの代わりに、ギターの細い弦でメロディーを奏でます。
現在ではメレンゲでもギターを用いていますが、それに比べバチャータはギターの音が高く鋭いのが特徴です。
なお、bachataという語は、アフリカ起源だという話がありますが、詳細は不明です。ご存知の方、教えて下さい。

♪近年のバチャータ♪
数十年前に、メレンゲが農村部から都市部に広まり、発展していったのと同じような道を、今のバチャータが辿っているといえます。
10年ほど前までは、バチャータは限られた地方(農村部)でしか聴かれることがなく、また、現在のように踊ることも多くはありませんでした。90年代に入って、ルイス・バルガスやアントニー・サントスなどが全国的ヒット曲を出し、人気が高まっていったようです。
年々都市部でのバチャータ人口が増加しているのは、ドミニカ各地で農村部からの人口流出が進んでいることと関係しているのかも知れません。最近ではアメリカや中米諸国でもバチャータ愛好者が増加しているとの報告もあります。

♪バチャータの踊り方♪
バチャータは4拍子です。メレンゲと同じようにペアを組み、斜めまたは横にステップを踏みます。
左から始めたとすると、  一、左足  二、右足  三、左足と踏んで、四拍目は右足の番なのですがこれを踏まずに、つま先をつく程度にします。次の小節の一拍目はその右足を逆方向「右」に踏み出し、  二、左足   三、右足  四、左足つま先。以下、左に四拍、右に四拍動く事を繰り返します。
これが一応の基本ですが、踊り方の決まりがとても緩やかなのがバチャータで、上記の説明の一〜四が、音楽の一〜四拍目とずれていることもしばしばです。細かい事は気にしない事。
あまり回すこともなく、回しても軽く1〜2回です。時々、サルサ風に踊るドミニカ人を見掛けますが、あれは邪道です。バチャータは、シンプルに踊るのが良いのです。
格好良く踊るコツは、歩幅は小さく軽く踏むようにして、「歩幅よりも腰の振り幅の方が大きくなる」位の気持ちで踊ることでしょう。また、人によって踊り方に特徴があるので、ドミニカ人と踊る場合は、相手の方に合わせるようにすると良いでしょう。
とにかく楽しく気持ち良く踊って頂くことが一番です!

♪どんなバチャテーロ(バチャータ歌手)がいるの?♪
バチャータ研究を始めて日の浅いワタクシは、古いバチャテーロに関しては詳しくありません。
という訳で、現在街角でよく聴かれているバチャテーロ6名を独断と偏見でご紹介します。
各々個性がありますので、これを参考に「お気に入りの一枚」と出会って頂ければ幸いです。

Raulin Rodriguez (El Cacique)
ワタクシが最も愛するバチャテーロ。昨年はプレシデンテコンサートや年末コンサートに出演したので、生でご覧になった方もいらっしゃるでしょう。
前作では "Morena yo soy tu marido" がヒット。そして12月に待望のニューアルバム "Sin Fortuna" をリリース。今年はこれを引っ提げて地方巡業をするものと思われます。
歌詞はどれも「君なしでは生きていけない」の一点張りなのですが、メロディと声が良いです。高めのキーと、間奏中に尻上がりのイントネーション(東北弁風)で語る台詞は、「新沼謙治」を彷彿とさせます。
お近くでコンサートの際はワタクシまでご一報を!

Antony Santos (El Mayimbe)
 ワタクシは個人的にはこの方の声は好きでないのですが、現在ドミニカで最も人気のあるバチャテーロと言っても過言ではありません。セルソ氏も大好き。更に、アメリカでもヒットしているようです。その代わり、ドミニカの農村部ではあまりコンサートをしません。
 11月頃新作 "Enamorado" を出し、その中の "Ay querida" という曲が早くも大ヒット中。ヤマサに居たら一日10回は聴けます。
 バチャテーロにも関わらず、アルバム中の半分がメレンゲで、前作中の "El quilin quililan" など、名曲(?)も多いです。代表的なバチャータと、楽天的なメレンゲの両方を一度に楽しみたい方にはお勧めです。

Zacarias Ferreira
 優しい顔立ちと高い声が、バチャータらしいクドい歌い方と絶妙のバランスを保っています。Requintoと呼ばれる超高音ギターも聴きどころです。
 昨夏に新作 "Me libere" を出し、精力的に地方巡業をしていた模様です。
 シバエーニョ(サルセド出身?)ですが、何故かオコアで大変人気があります。
 妙に勿体ぶって自分の名前を名乗るのが特徴。知らない方はタカシ氏にモノマネをして頂きましょう。

Frank Reyes (El Principe)
 ロマーナのチカポンのお気に入り。「王子様」だけあって、身なりもこざっぱり、歌もこざっぱり。(しかしながら、CDジャケットの内側の写真には絶句させられることでしょう。)
 個人的には、あっさりし過ぎて少々物足りない気が致しますが、「クドいバチャータは苦手…。」という方には入りやすい一枚かと思われます。

Luis Vargas (El Ultimo Tenor)
 一昔前は、バチャータ界の中心的存在だった方です。現在でも、40歳代以上のドミニカ人はこの方をNo.1に押すことが多いです。しかし最近のラジオやディスコ等ではかかることが少なくなってきています。
 声は渋い。ワタクシの所有している前作のアルバムでは、泣いたり、電話かけたり、叫んだり、忙しいです。年末に出たらしい最新アルバムも "El lloron" というタイトルなので、また泣いているものと思われます。 
 メレンゲーロの Sergio Vargas と兄弟という噂は本当でしょうか?

Alex Bueno
 この人も、最近のラジオでかかることは少ないですが、渋いいい低音で歌います。
 アルバム "Bachata a su tiempo" は、実はワタクシがドミニカで初めて購入したCDです。珍しく、歌詞カードが付いている点もポイント高いですね。
 掘り出し物好きな貴方にお勧め致します。

その他
 他に人気の高いバチャテーロは、Bolivar Peralta, Joe Veras, El Gringo de la Bachata などです。また少数ながら、女性歌手も居るようです。

♪最後に♪
 今でこそ、バチャータの研究に全力を注いでいるワタクシでございますが、初めからこんなにハマっていた訳ではありません。
 音楽的には、単調で粗削りなバチャータ。ヤマサに住み始めた頃は、毎日何十回となく流れて来る同じメロディに、嫌気が差していた程でございます。ところが、そんな時期を通り過ぎると、徐々に愛着が沸いてきて、今では「嬉しい時にバチャータ、悲しい時にバチャータ」といった有り様です。
 この投稿をきっかけに、一人でも多くの日本人がバチャータ好きになって下されば、ワタクシ、感激の至りでございます。
 今後もさらにバチャータの研究を深めていく所存です。ワタクシの発表に、間違いや、新情報がありましたらどうぞお知らせ下さいませ。

     (2000年1月16日脱稿)

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